こんにちは、書道家の繁本佳華です。
最近社会人になってから、大学生活のことを思い出すことがよくあります。
教育大学の書道科で過ごした大学生活の4年間、書道用品店のアルバイトをさせていただきまして、当然なのですが非常に貴重な経験でした。
その経験を通じて感じたのは、初心者の方の道具選びが非常に難しいということです。
そもそも、どこで購入するのか…書道道具の相場はどれくらいなのか…など疑問がたくさん湧き出てきます。
書道用品店以外にも書道道具が売っているお店はたくさんありますよね。書道用品店、文房具屋、通販、ホームセンター…
さらに書道道具はたくさんありますから、どれを買うかを決めるのはさらに難しいと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、自分の書道道具を初めて購入する方々に書道家の私が考える、初心者の方々の書道道具の選び方をお伝えしていきます。
書道道具の基本道具
皆様、文房四宝って知っていますか。
元来,書道やそれに関連することに用いる道具のうちのうち、特に大切な筆,硯,紙,墨を文房四宝と呼びます。
もっと分かりやすくお伝えするなら、
文房四宝=書道道具の基本的な4点
となります。
そこで初心者の方々の書道道具の選び方もこの基本的な4点を重視して、ご紹介していきます!
筆を選ぼう
筆は、基本的に茶色の毛と白色の毛があります。
茶色は硬く、白色は柔らかい。といった特徴があります。
よく、学生用の書道道具のセットには、茶色の毛の筆が入っていますが、白色の筆の方が弾力が少なく、扱いが難しいため、白色の筆から使う方が上達に繋がると感じます。
なぜなら、扱いが難しい毛で練習すると、自分の技術なしでは上手く書けないからです。扱いが難しい白色の筆の後に茶色の筆を使うと、筆そのものの力で簡単に書けるようになります。
白色の毛は、白馬、山羊、猫、白狸が多く、
茶色の毛は、茶馬、鼬、茶狸が多い傾向があります。
馬の毛は弾力があり、山羊は柔らかい。猫は弾みのある弾力があり、狸は細部も細かく書けるような鋭さがある。鼬の毛はシャープな線を引きやすい。個人的には直感でこのように感じました。
筆は動物の毛の種類によって、柔毛筆(じゅうもうひつ)、 剛毛筆(ごうもうひつ)、 兼毛筆(けんもうひつ)の三種類に分けられます。
今回私がおすすめする初心者向けの筆は、白色の兼毛筆です。
もう少し丁寧に言うと、筆の毛の内側がやや茶色で、表面が白色で覆われてます。
この筆は白馬の毛がベースで多少の弾力があり、柔らかさをもたせるために山羊の毛を加え、そこに猫の毛や狸の毛を加えることで弾力を調整しています。
しかし、動物の毛は希少なものであるため、筆の価格を下げるために、ナイロンの毛を混ぜて入れていることが多いのです。
この初心者向けの兼毛筆(筆の毛の内側はやや茶色で表面の毛は白色で覆われた筆)の相場は、
1800円~2500円、といったところでしょうか。
ちなみに…
羊毛をベースにしている筆(白・兼毛筆)もあります。
こちらの特徴としては、狸の毛やナイロン量をやや多くして、柔らくなりすぎないように工夫されていると感じます。
墨は固形のものがオススメ
皆様は学生時代に書道の授業がありましたか?
私は小学生のとき、学校の授業において墨液を磨る(する)という指導を受けました。
おそらく、『固形墨を磨るという経験をしてほしいけど、40分、50分の授業内では間に合わないため墨液を使用しよう』という先生の思いが込められているのだと思います。
ここで私がお伝えしたいのが、
初心者の方であっても墨液ではなくて、固形墨を購入する!
そしてとにかく、固形墨を磨る!
これに徹します(笑)
墨液じゃダメ?
墨液は便利なものでありますが、筆や硯には悪影響を及ぼします。
簡単に言うと、墨液にはボンドやノリのようなねっとりした成分や保存料が含まれており、これが悪影響の原因となります。
墨を食べ物に例えると
墨液は市販のクッキー。固形墨が手作りクッキー。
という次第です。
市販のクッキーは長持ちしますが、食品添加物や保存料は決して身体に良いとは言えないですよね。
墨液も長持ちしますが、動物の毛からできている筆や天然石でできている硯には決して良い影響を及ぼさないのです。
それに対して手作りのクッキーは、賞味期限は確かに短いですが身体には良いのです。
同様に、擦った墨は動物の皮の成分でできた膠(にかわ)という成分が含まれているために、長持ちしませんが筆には優しいです。
またこの墨も食べ物と同様に冷蔵庫で保管すると多少は長持ちするのです。
また固形墨を磨るといい香りがします。
膠は動物由来なので臭いが付着していますが、固形墨にはそれを和らげるために、香料が使われているんです。
固形墨を磨ると良い香りが、、、実はこれは香料の香りだったのですね。
私がおすすめするのは、油煙墨です。
油煙墨の特徴は、固形墨そのものの硯と接した面がテカリと光っていることです。一般的に書道の先生がお手本を書くときに油煙墨を使用されていることが多いため、書道の導入としては活用しやすいと考えます。
忙しい毎日だからこそ、固形墨を磨ることで、心を落ち着かせ書道と向き合うことができます。
それは墨の滲みや濃さ・薄さから作品がさらに映えることにも繋がりますよ。
紙を選ぼう
書道の初歩的な段階で用いられる紙は、【半紙】というサイズの紙です。
半紙には、手漉きのものと機械漉きのものがあります。
初心者の方でも購入が可能な安価な半紙は、機械漉きのものです。
相場は550円/100枚あたり、といったところでしょうか。
ご自宅でも書きたい方はこちらの半紙がおすすめです↓
また、半紙に文字を書く時に下に何も敷かないで書くと、半紙に吸い込まれなかった墨が机や床についてしまいます。
そのため、下敷きの使用は欠かさないようにしましょう。下敷きには汚れ防止のほかに、筆の動きを滑らかにする役割もあるからです。
下敷きの厚さは1mm~3mmのものが多いです。1mmだと薄くて持ち運びには便利ですが折り目がつきやすいので、2mm以上のものがおすすめです。
使い分けとしては、2mmが自宅用、1mmが書道教室への持ち運び用に適しているといったとこでしょうか。
色も黒・白・臙脂など様々な種類がありますが、やはり暗い色の方が汚れは目立たないというメリットがあります。
硯を選ぼう
硯に関しては、セラミックではなく必ず本物の石のものを買うようにしましょう。(よっぽど金銭的にしんどくない限り)
書道の硯(すずり)の初心者向きのものは、ズバリ!学生羅紋硯がおすすめです。
羅紋硯、学童用の書道セットに良く使用される硯ですね。価格は非常にお求めやすく、墨を早く濃く磨ることができます。
羅紋硯はセラミック硯より本物の石がいいという方に最適であり、学童用としてまだまだ定番品であります。
セラミック硯より本物の石の硯を使う方が、墨色も美しいのです。
書道専門店で直接買うのも良いですし、今は書道専門店のネット販売もありますのでまずはチェックされてみてはいかがでしょう。
※Amazon・楽天で学生羅紋硯は販売されていませんのでご注意ください。(2019年5月現在)
また『学生羅紋硯』よりランクの高い『羅紋硯』もオススメです。その分、値段も少し高くなりますので、お財布とご相談ください!
たくさんの命に、ありがとう
書道道具は上記のように、たくさんの動物の成分からできているのです。生命をいただいているから、書道は成立するのです。
そして今日に至って、書道道具の原材料となるものはどんどん減少し、職人さんの数も減少しています。
このことから私たちは、これからより道具を尊ばなければならない時代を生きるのではないでしょうか。
そんな思いを持ちながら、初めての書道道具選びを楽しんでいただきたいです。
神戸在住
ちょっとおもしろくて、たまに役立つ
ええ塩梅な情報を届けていくつもりです